2016/10/20、小路啓之先生の急逝。今日知った。
未だに信じられない。心から敬愛する漫画家の先生。 嫌だ。まだ消えて欲しくない。作品を描き続けて欲しい。蘇生して欲しい。
天才すぎて不死身なんじゃないかと思っていた。
出会いは古本屋で『かげふみさん』の1巻を手にした時だったけれど、それ以降は毎月幻冬舎のGENZO誌を読んで、単行本を全て新品で買っていた。数々のサイン色紙やサイン本を大切に持っている。
作品世界同様、際どいというか、たまにタブーっぽいこともバンバン発言してしまう方で、人前でのパフォーマンスが苦手そうなのに、人に掴まれることを躱すように、ちょっと風変わりな言動をされる方で、そういったお人柄がまた面白いと思っていた。ツイッターを初められた時の最初のツイートも「ごきぶり食べた」で、「ああ、こういう人なんだなあ」と微笑ましく思った。 奇抜で神経質なキャラクター、描きこまれた町並み、人間心理の観察、随所に張り巡らされた小ネタ、複雑で怒涛の展開を見せる物語。一度飲み込まれたら最後の、不思議な世界を描く人だった。
自分の青年期は、小路啓之作品と共にあったと思う。これから先も、ずっと、小路啓之先生の漫画と共に歩んでいくのだと、そう完全に信じ込んでいた。 この間、短編集と『来世であいましょう』を読み返したばかりだった。今日は『かげふみさん』を読み返した。
めぐみのメグが好きだった。『犯罪王ポポネポ』のサイン会で、既に所持していた『かげふみさん』1巻をもう一冊買って、勇気を出してこっちにもサインをお願いした。メグを描いて下さった。
いつも、イベントで話しかける度に、ガチガチにアガってしまっていた。緊張で手に汗握りながら、勇気を振り絞って「『かげふみさん』は、最初の、服を着たままセックスする男が出て来て始まるのが好きで…!」などと言ったら、笑ってくださった。 『メタラブ』『束縛愛』のイベントでは、月刊モーニング・ツーを買うとそこにサインが貰えたのだが、その際に、「何か書いて欲しい言葉とかある?」となって、「え、あー、えっと……」とパニクっていたら、先生は突然閃いたように「あ、じゃあ、オムライス!!」と謎のメッセージを添えて下さった。
だから今日の昼食はオムライスにした。思えば『来世であいましょう』のポワチン大魔王が、その味を知りたくてしょうがなかった食べ物だ。先生もお好きだったのだろうか。
コミカルなのに、人がよく死ぬ漫画を描く人だった。だけど御本人の生涯まで大型自転車の転倒事故なんて、そんな漫画のワンシーンみたいな終わり方して欲しくなかった。 いつもふらふらと小旅行に出ていたらしい。いつものようにドデカイ自転車で、いつものようにお住いとは遠く離れた奈良県で。報道されているのが、あまりにリアルな小路先生の日常の一場面で、事実を否認することが出来ない。
ああ、自分の作品のジャケット用に、イラストを描いてもらうのが夢だった。本当に早過ぎた。死んでは行けない人が死んでしまった。悔しい。
まだ世界の何処かで生きてらっしゃるような、そんな気がしてしまうのだ。僕の脳内の小王国では、いつも王座の上で踊ってらっしゃったのだから。
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